発達のとびら 発達障害の情報を、ひとつの入口から

知的障害を伴わない発達障害

「発達障害=知的障害」ではありません。法律の定義も、医学の分類も、この2つを別のものとして扱っています。知的な遅れがないと困難は見えにくくなり、「努力不足」と受け取られやすくなります。それでも使える制度はあります。

かんたんにいうと

  • 発達障害と知的障害は、別のものです。
  • 知的な遅れがなくても、困りごとはあります。
  • 手帳や支援は、使えるものがあります。

法律の定義に、知的障害は入っていない

発達障害者支援法は、「発達障害」をこう定義しています。

この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。(第2条第1項)

ここに知的障害は含まれていません。 知的障害は、知的障害者福祉法など別の枠組みで扱われています。「発達障害」と「知的障害」は、法律上は別のものです。

同じ条文は、生活の制限がどこから生じるかについても書いています。

「発達障害者」とは、発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものをいい(第2条第2項)

制限は、特性だけで決まるのではなく、特性と「社会的障壁」の組み合わせで生じる、という考え方です。知的な遅れがなくても、周囲の仕組みや理解のあり方によって制限は生じます。

「高機能」ということば

「高機能自閉症」「高機能広汎性発達障害」ということばを見たことがあるかもしれません。

文部科学省が平成15年(2003年)に示した定義では、高機能自閉症は「自閉症のうち、知的発達の遅れを伴わないもの」とされています。同じ資料で、学習障害(LD)は「基本的には全般的な知的発達に遅れはないが」特定の能力の習得と使用に著しい困難を示すもの、と定義されています。

医学の分類でも、別々の項目

DSM-5-TRでは、発達障害と知的発達症(知的障害)は、どちらも「神経発達症群」という同じ大きな分類に入っています。ただし、その中では別々の項目です。

つまり、ASDやADHDと知的発達症は、併存することもあれば、しないこともあります。 「発達障害があるなら知的障害もある」とも、「知的障害がないなら発達障害ではない」とも言えません。併存とグレーゾーンで、重なりの考え方を書いています。

遅れがないから支援が要らない、ではない

ここが、この記事でいちばん伝えたい点です。

知的な遅れがない場合、困難は外から見えにくくなります。会話ができ、テストの点も取れる。それなのに、忘れ物が続く、集団の暗黙のルールが読めない、読み書きだけが極端に苦手——といった困りごとは、「本人の努力不足」「性格の問題」と受け取られやすくなります。

その結果、支援につながるのが遅れ、うまくいかない経験が積み重なって、二次障害につながることがあります。

使える制度

知的障害を伴わない場合に使える主な制度です。どれも、知的障害の有無で決まるものではありません。

制度知的障害を伴わない場合くわしく
障害者手帳対象になるのは精神障害者保健福祉手帳(療育手帳は知的障害のある人が主な対象)障害者手帳
療育(児童発達支援・放課後等デイサービス)受給者証で利用。手帳がなくても取得できる受給者証と福祉サービス
学校での配慮通常の学級に在籍したまま合理的配慮を受けられる。診断書がなくても相談できる学びの場の選び方
通級による指導通常の学級に在籍したまま、一部の時間だけ別の教室で個別の指導学びの場の選び方
仕事精神障害者保健福祉手帳があると障害者雇用の枠に応募できる働き方と就労の支援
相談発達障害者支援センターは診断の有無にかかわらず相談できる相談先・窓口

大人になってから気づくことがある

知的な遅れがないと、子ども時代は「少し変わった子」「不器用な子」で通り過ぎることがあります。就職して、曖昧な指示や暗黙の了解、締め切りや書類の管理に苦労して初めて、特性に気づく人がいます。子どもの受診をきっかけに、親自身の特性に気づくこともあります。

大人の診断では、子どものころの様子が重要になります。母子健康手帳や通知表、家族から聞いたエピソードがあると診断が進みやすくなりますが、手元に何も残っていなくても受診はできます。流れは診断・検査の流れに書いています。

この先に読むページ

出典

最終更新 執筆 sin(ADHDとASDの兄弟を育てています。)