注意欠如・多動症(ADHD)とは
不注意(集中の向け方)と、多動性・衝動性(動きやブレーキのかかり方)に特徴があります。「やる気がない」「性格の問題」と誤解されやすい特性です。
かんたんにいうと
- 集中を向ける先が、自分で選びにくいことがあります。
- 思いついたことを、すぐ行動に移すことがあります。
- やる気や性格の問題ではありません。
診断の基準はどうなっているか
DSM-5-TR では、ADHD(Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder)は不注意と多動性・衝動性という2つの領域、それぞれ9項目で定義されています。
不注意の例(9項目より)
- 細かいところまで注意が向かず、ケアレスミスが多い
- 課題や遊びに集中し続けることが難しい
- 話しかけられていても聞いていないように見える
- 指示をやり遂げられない。途中で他のことに移ってしまう
- 順序立てて取り組むこと、時間の管理が苦手
- 集中し続ける必要のある課題を避けたがる
- 物をよくなくす(鍵・財布・宿題・道具)
- ちょっとした刺激ですぐ気がそれる
- 約束や日課を忘れてしまう
多動性・衝動性の例(9項目より)
- 手足をそわそわ動かす、席で身体をよじる
- 座っているべき場面で立ち歩く
- 落ち着かない感じが続く(大人では内面的な落ち着かなさとして)
- 静かに遊ぶことが難しい
- 「エンジンで動かされているように」動き続ける
- しゃべりすぎる
- 質問が終わる前に答えてしまう
- 順番を待つのが苦手
- 他の人の会話やゲームに割り込む
診断に必要な条件
診断は、項目に当てはまるかどうかだけでは決まりません。次の条件がそろって初めて検討されます。
- 17歳未満は各領域6項目以上、17歳以上は5項目以上が、6か月以上続いている
- いくつかの症状が12歳になる前からあった
- 2つ以上の状況(家庭・学校・職場・友人関係など)で見られる
- 生活・学業・仕事の質を明らかに損なっている
- 他の精神疾患ではうまく説明できない
3つのタイプ
どちらの領域が目立つかで、3つに分けられます。
| タイプ | 特徴 | 気づかれやすさ |
|---|---|---|
| 混合型 | 不注意と多動・衝動の両方が目立つ | 気づかれやすい |
| 不注意優勢型 | 忘れ物・ぼんやり・段取りの苦手さが中心 | 見落とされやすい |
| 多動・衝動優勢型 | 動きの多さ、待てなさが中心 | 気づかれやすい |
年齢によるあらわれ方の違い
幼児期
- じっとしていられない、高い所に登る、走り出す
- 順番を待てない、手が出てしまう
- 危険への予測が届きにくく、ヒヤリとする場面が多い
学齢期
- 忘れ物・なくし物が多い。プリントが鞄の底で丸まっている
- 宿題に取りかかるまでが長い。始めれば速いこともある
- 授業中に離席する、思いついたことを口にしてしまう
- 何度も注意されることで、自信を失いやすい
思春期
- 多動は目立たなくなり、内面的な落ち着かなさに変わることが多い
- 忘れ物・提出物・時間管理の困りごとが前面に出る
- 叱られ続けた経験から、自己評価が大きく下がりやすい時期
成人期
- 締め切り管理、書類、片づけ、金銭管理で苦労する
- 会議中に別のことを考えてしまう、話に割り込んでしまう
- 転職を重ねる、人間関係で消耗する
- 興味のある仕事では、驚くほどの集中力を発揮することがある
どれくらいの人がいるのか
DSM-5では、ADHDは子どもの約5%、成人の約2.5%にみられると記されています。調査方法や国によって数字には幅があります。
支援の考え方
ADHDでは、環境の調整と、必要に応じた薬の両方が選択肢になります。どちらか一方ではなく、環境調整が土台という順番が基本です。
環境を整える
- 記憶に頼らない仕組みにする — 持ち物リストを玄関に貼る、リマインダーを使う
- 1度に1つだけ — 指示は分けて出す。手順は書き出す
- 時間を見えるようにする — 残り時間が図で分かるタイマーを使う
- 物の置き場所を1か所に決める — 探し物の時間を減らす
- できたことに注目する — 叱責の量を減らすこと自体が支援になる
薬について
ADHDには、日本国内で承認された治療薬があります。症状を和らげ、環境調整や本人の工夫が届きやすくするためのもので、ADHDそのものを消すものではありません。
処方には診断と医師の判断が必要で、効き方や副作用は人によって異なります。開始・変更・中止は必ず主治医と相談してください。本サイトでは具体的な薬剤名や用量の案内は行いません。
二次的な困りごとを防ぐ
ADHDで最も避けたいのは、叱られ続けた経験の積み重ねによる自信の低下です。不注意による失敗は本人の努力不足に見えやすく、家庭でも学校でも注意される回数が多くなりがちです。
その結果として、不安、気分の落ち込み、不登校、対人関係の回避といった二次的な困りごとが生じることがあります。これは特性そのものより深刻になり得ます。
環境を整えて失敗の回数そのものを減らすことは、単に便利にするためではなく、この二次的な困りごとを防ぐための支援でもあります。
診断までの流れは診断・検査の流れを、ASDとの重なりについては併存とグレーゾーンをご覧ください。
出典
- DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版 テキスト改訂版(American Psychiatric Association, 2022)
- ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics(World Health Organization)↗
- 発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)↗
- こころの情報サイト/みんなのメンタルヘルス(厚生労働省)↗