自閉スペクトラム症(ASD)とは
人との関わり方と、興味やこだわりのあり方に特徴があります。感覚の過敏さ・鈍感さをともなうことも多く、「スペクトラム(連続体)」の名のとおり、あらわれ方は一人ひとり大きく違います。
かんたんにいうと
- 人との関わり方に、独自のスタイルがあります。
- 決まったやり方や順番を大切にします。
- 音・光・肌ざわりを強く感じることがあります。
診断の基準はどうなっているか
DSM-5-TR では、自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder)は2つの領域の特徴で定義されています。両方がそろっていることが診断の条件です。
A. 社会的コミュニケーションと対人的な相互反応の困難
- 会話のやりとりや、興味・感情を分かちあうことの難しさ
- 視線・表情・身ぶりといった、ことば以外のやりとりの難しさ
- 関係を築き、保ち、場面に合わせて調整することの難しさ
B. 行動・興味・活動の、限定された反復的な様式
次の4つのうち、2つ以上が当てはまることが条件です。
- 同じ動きをくり返す、物を並べる、決まった言い回しをくり返す
- 同一性へのこだわり。日課や手順が変わることへの強い抵抗
- 強くて限定された興味。ひとつの対象への深い没頭
- 感覚刺激への過敏さ・鈍感さ、または感覚への強い関心
さらに、これらが発達の早い時期からあること、生活に支障が出ていること、知的発達症だけでは説明できないことが条件になります。
「スペクトラム」ということばの意味
スペクトラム(spectrum)は「連続体」という意味です。
2013年のDSM-5で、それまで別々の診断名だった自閉性障害・アスペルガー障害・特定不能の広汎性発達障害などがひとつにまとめられ、「自閉スペクトラム症」になりました。境界線を引いて分けるより、程度の連続として捉えるほうが実態に合っているという判断です。
このため「アスペルガー症候群」は、現在の診断基準では使われていません。すでに診断を受けている方の診断名が無効になるわけではありませんが、これから診断を受ける場合は「自閉スペクトラム症」となります。
DSM-5-TR では、必要な支援の量を3つのレベルで表します。これは「重さ」の評価ではなく、どれだけの支援が要るかの目安です。
| レベル | 必要な支援 |
|---|---|
| レベル1 | 支援を必要とする |
| レベル2 | 十分な支援を必要とする |
| レベル3 | 非常に十分な支援を必要とする |
年齢によるあらわれ方の違い
同じ特性でも、年齢や置かれた環境によって見え方は変わります。以下は「よくある例」であり、当てはまらないことも当然あります。
乳幼児期
- 目が合いにくい、名前を呼んでも振り向きにくい
- 指さしが出にくい、大人と一緒に同じものを見る場面が少ない
- ことばの発達がゆっくり、または一度出たことばが減る
- おもちゃを本来の遊び方ではなく、並べる・回すなどして遊ぶ
- 決まった道順・決まった手順が変わると強く混乱する
学齢期
- 集団行動や、暗黙のルールの読み取りに苦労する
- 会話が一方通行になりやすい。冗談や皮肉の意図が伝わりにくい
- 予定変更や避難訓練などの「いつもと違う」に強い不安が出る
- 給食のにおい、体育館の反響音、制服の肌ざわりがつらい
- 興味のある分野では、年齢を超えた知識を持つことがある
思春期・青年期
- 周囲との違いを自覚し、自信を失いやすい時期
- 「まわりに合わせよう」と無理を重ね、疲れきってしまうことがある
- 不安や気分の落ち込みが強くなることがある
成人期
- 職場での曖昧な指示、雑談、暗黙の了解に苦労する
- 手順が決まった仕事、専門性の高い仕事で力を発揮しやすい
- 子どもの受診をきっかけに、親自身の特性に気づくことがある
感覚の過敏さ・鈍感さ
生活のしづらさに最も直結しやすいのが感覚の特性です。「わがまま」や「気にしすぎ」ではなく、感じ方そのものが違います。
| 感覚 | 過敏の例 | 鈍感の例 |
|---|---|---|
| 聴覚 | 掃除機・ハンドドライヤー・ざわめきが痛いほど響く | 呼ばれても気づかない |
| 視覚 | 蛍光灯のちらつき、白い紙のまぶしさがつらい | — |
| 触覚 | 服のタグ、靴下の縫い目、散髪、歯みがきが苦手 | けがや汚れに気づきにくい |
| 味覚・嗅覚 | 食べられるものが極端に少ない(偏食) | — |
| 前庭・固有覚 | 高い所や揺れが強く怖い | 動き回りたい、強く抱きしめられると落ち着く |
環境の側を変えることで、かなりの部分は軽くできます。イヤーマフや耳栓、照明の調整、席の位置を変える、給食のにおいから離れられる場所を用意する、といった調整が代表的です。
支援の考え方
ASDの特性そのものをなくす治療はありません。支援の中心は、本人が分かりやすい形に環境と情報を整えることです。
- 見える形にする — 予定を絵や文字で示す、手順を1ステップずつ書き出す
- 見通しを持てるようにする — 変更は前もって伝える。「終わり」を明示する
- ことばを具体的にする — 「ちゃんとして」ではなく「イスに座って、本を開いて」
- 感覚環境を整える — 音・光・におい・肌ざわりを本人に合わせる
- 得意を活かす — 興味の深さは、学習や仕事の強い足がかりになる
医療機関では、強い不安や気分の落ち込み、睡眠の問題など、併存する困りごとに対して薬が検討されることがあります。ASDそのものへの薬ではない点は押さえておいてください。
具体的な相談先は相談先・リンクに、診断までの道のりは診断・検査の流れにまとめています。
出典
- DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版 テキスト改訂版(American Psychiatric Association, 2022)
- ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics(World Health Organization)↗
- 発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)↗
- 発達障害ナビポータル↗