二次障害(不安・落ち込み・不登校)
特性そのものより深刻になり得るのが二次障害です。そして、環境を整えることで予防できる部分が大きいものでもあります。「甘やかしになるのでは」と迷ったとき、失敗の回数を減らすことは甘やかしではなく予防です。
かんたんにいうと
- 特性そのものとは別に、あとから出てくる困りごとがあります。
- 失敗や叱られることが重なると、不安になったり学校に行けなくなったりします。
- 環境を整えると、防げることが多いです。
「二次障害」は、正式な診断名ではない
「二次障害」ということばは、医学的に明確に定義された用語ではありません。 国立特別支援教育総合研究所の報告書も、「明確には定義づけられていない」としたうえで、次のように整理しています。
発達障害のある子どもが本来抱えている様々な障害特性を一次障害と捉えると、環境やかかわりに起因する適応困難の状態は二次障害と捉えられる。
つまり、一次障害=生まれつきの特性、二次障害=特性と環境のかみ合わせの悪さから、あとから生じた困りごと、という区別です。同じ報告書は、二次障害を「環境との相互作用から生じるもの」と位置づけています。
どのように起きるか
報告書が描いている流れは、次のようなものです。
- 特性のために、学習面・行動面・対人関係でつまずきや失敗が起きる
- 失敗経験が積み重なり、周りからの注意や叱責、無理強いがくり返される
- 不安が高まり、自信や意欲を失い、自己評価や自尊感情が下がる
- それがさらなる適応困難を招き、不登校やひきこもり、反抗的な態度などとして現れる
出発点は特性でも、途中の段階は環境とかかわりの問題です。報告書は、学校が「練習すれば必ずできる」「他の子はみんなできている」といった前提で動いていることを挙げ、周囲と常に同じことを求められ続ける環境は、発達障害のある子どもにとって「とても厳しい生活環境」になると述べています。
あらわれ方
報告書は、二次障害としてよく見られる症状を3つの面に分けています。ここでは代表的なものだけを挙げます。
| 面 | 例 |
|---|---|
| 行動面 | 不登校、ひきこもり、反抗、暴言、かん黙(話せなくなる)、食行動の乱れ |
| 精神面 | 不安、抑うつ、自傷、対人恐怖、強迫観念 |
| 身体面 | 頭痛、めまい、チック、嘔吐、下痢、過呼吸 |
また、二次障害の現れ方として、次の4つの場合を挙げています。
- もともとの症状が悪化する(例:ADHDの落ち着きのなさがエスカレートする)
- もともとの症状にはない症状が見られる(例:ADHDに反抗的な言動)
- もともとの症状にはない症状に、併存する診断がつく(例:ADHDに不安障害)
- 併存する診断がある上で、さらに症状が悪化する
予防できる部分が大きい
報告書がくり返し述べているのは、二次障害は予防的対応の対象だということです。
二次障害は、子どもが安心して生活することができる環境へと改善を図ることで、比較的短時間で改善する可能性もある。自己肯定感や自尊感情が高まる支援を工夫するとともに、二次障害を生起させないような予防的対応を常に意識しておくことが重要である。
裏を返すと、叱ってなんとかしようとしても効きません。 報告書は、自己肯定感を持てず先の見通しが持てなくなっている本人を「叱咤激励しても効果は望めない」と明言し、周囲の大人が見通しを持って対応するしかない、としています。
家庭や学校でできることは、特別なことではありません。
- 失敗の回数を減らす——席の位置、手順の見える化、予定を前もって伝える。困りごと別グッズの「道具の前に」にも書いたとおり、環境の調整で減らせることは実際にかなりあります
- 「できた」「わかった」を増やす——報告書は、学習で「できる、わかる」ことが自己肯定感を一気に高める場面が学校で見られる、と述べています
- 早めに個別の対応を始める——過去に登校しぶりがあった、学習や集団生活でつまずいている、といったケースは、問題が大きくなる前に個別の支援を始めることが必要だとしています
- 配慮を求める——学校での合理的配慮は、診断書がなくても相談できます
- 関わり方を学ぶ——ほめ方・指示の出し方・環境の調整を体系立てて学ぶペアレント・トレーニングがあります
失敗の回数を減らすことは、甘やかしではなく予防です。
相談先
すでに不安や落ち込み、不登校が続いている場合、家庭だけで抱えないでください。
- 学校——担任、特別支援教育コーディネーター、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー
- 発達障害者支援センター——診断の有無にかかわらず相談できます
- 精神保健福祉センター——こころの健康全般の相談窓口。各都道府県・政令指定都市に設置されています
- 医療機関——児童精神科、発達外来など。すでに通院中なら主治医へ。流れは診断・検査の流れへ
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