ペアレント・トレーニング(保護者が関わり方を学ぶプログラム)
「子どもをどう叱ればいいか分からない」「ほめ方が分からない」という保護者の困りごとに、体系立てて答えるプログラムがあります。国が地域への普及を進めているもので、療育の場の家族支援の例にも挙げられています。効果は「あるといわれている」段階の表現にとどめ、万能薬としては書きません。
かんたんにいうと
- 親が、子どもへの関わり方を学ぶプログラムです。
- 何人かのグループで、数回に分けて行います。
- 国が広めようとしている支援のひとつです。
何をするプログラムか
国立障害者リハビリテーションセンターは、ペアレント・トレーニングをこう説明しています。
保護者が子どもの行動を観察して特徴を理解したり、発達障害の特性をふまえたほめ方やしかり方等を学ぶことにより子どもの問題行動を減少させることを目標とするもの
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインも、「保護者がこどもの障害の特性やその特性を踏まえたこどもへの関わり方を学ぶことにより、こどもの行動変容することを目標とします」と注記しています。
つまり対象は子どもではなく保護者で、学ぶのは子どもの行動の見方と、関わり方です。「親のしつけが悪い」という前提のプログラムではありません。厚生労働省の実践ガイドブックは、ペアレント・トレーニングを「保護者支援と子どもの発達支援」の両方に位置づけています。
2つの考え方
実践ガイドブックは、ペアレント・トレーニングの土台として2つのアプローチを挙げています。
| アプローチ | 何を使うか | 何を目指すか |
|---|---|---|
| 行動変容アプローチ | 学習心理学や行動療法の理論・技術 | 子どもの行動に着目し、望ましくない行動をより望ましい行動に変える |
| 関係強化アプローチ | 心理療法や遊戯療法の理論・技術 | 肯定的なコミュニケーションと親子の好ましい情緒的な経験によって、親子関係を変える |
日本で広まっているプログラムの多くは行動変容アプローチを土台にしています。「ほめ方」「指示の出し方」「無視する(注目しない)技法」「環境の調整」などが、講義と演習で扱われます。
標準的な形(基本プラットホーム)
プログラムの内容は実施機関によって違いますが、実践ガイドブックは「基本プラットホーム」として共通の要件を示しています。
- グループで行う——個別より、4〜8人のグループでの実施が推奨されている
- 回数と時間——全体で5回以上、おおむね隔週、1回90〜120分(ニーズに応じて増やす)
- 毎回参加が原則——遅刻・早退はなし。家庭でのホームワークを行う
- 学び方——講義で知識と技法を知り、演習やロールプレイをして、家庭でのホームワークを通して体験的に学ぶ
- 振り返り——家庭での取り組みを各回で振り返り、それぞれの子どもや家庭に合った方法を形成する
- フォローアップ——全回終了後、6か月以内にフォローアップの回を設けることが推奨されている
ペアレント・プログラムとの違い
似た名前の「ペアレント・プログラム」があります。国立障害者リハビリテーションセンターの説明では、こちらは次のものです。
育児に不安がある保護者、仲間関係を築くことに困っている保護者などを、地域の支援者(保育士、保健師、福祉事業所の職員等)が効果的に支援できるよう設定された、グループ・プログラム
| ペアレント・プログラム | ペアレント・トレーニング | |
|---|---|---|
| 主な内容 | 子どもの行動を客観的に捉える「見方」を学ぶ | 行動理論にもとづく具体的な「関わり方」を身につける |
| 実施者 | 保育士・保健師・福祉事業所の職員など地域の支援者 | 心理職などの専門性が求められる |
| 位置づけ | 入門的 | より実践的 |
どちらが上ということではなく、入口の広さが違います。 地域で先に見つかるのはペアレント・プログラムのほうかもしれません。名前が似ているので、案内を見たときは「どちらか」を確かめてください。
どこで受けられるか
実践ガイドブックは、実施している機関として次を挙げています。
| 機関 | 主な対象 |
|---|---|
| 医療機関 | 受診している子どもの保護者 |
| 療育機関(児童発達支援など) | 利用している子どもの保護者 |
| 相談機関(発達障害者支援センター、教育相談室など) | 相談している保護者 |
| 大学・私設相談室・企業の支援事業 | 募集に応じた保護者 |
| NPO・家族会 | 会員や募集に応じた保護者 |
探し方として現実的なのは、次の順番です。
- 通っている療育の場に聞く——児童発達支援ガイドラインは、家族支援の例として「ペアレント・トレーニングの実施」を挙げ、事業所の自己評価の項目にもしています(受給者証と福祉サービス)
- 発達障害者支援センターに聞く——発達障害者支援法は、センターの業務に「発達障害者及びその家族その他の関係者」への相談・情報提供・助言を定めています。地域でどこが実施しているかを知っている窓口です
- 主治医に聞く——通院中なら、医療機関で実施している場合や、紹介先を持っている場合があります
期待できることと、限界
厚生労働省の支援者用マニュアルは、効果についてこう書いています。
子どもの生活スキルの向上、問題となっている行動の減少、親の養育スキルの獲得、親のストレスや抑うつの減少に効果があるといわれています
「効果があるといわれています」という表現のとおり、すべての家庭に同じように効くものではありません。 このサイトでも、「治る」「必ず良くなる」とは書きません。
一方で、はっきり言えることもあります。
- 保護者への支援は、法律が自治体に求めている——発達障害者支援法第13条は、都道府県と市町村に対し、家族が「適切な対応をすることができるようにすること等のため」、相談・情報提供・助言・家族が互いに支え合う活動の支援を行うよう努めることを定めています
- 叱り方を変えることは、二次障害の予防と重なる——失敗経験や叱責の積み重ねが不安や自己評価の低下につながる仕組みは、二次障害に書いたとおりです。ペアレント・トレーニングが扱う「ほめ方・指示の出し方・環境の調整」は、その積み重ねを減らす方向の技法です
この先に読むページ
- 家族のこと——家族支援が制度に位置づけられていること
- きょうだい児——家族支援のもうひとつの対象
- 二次障害——関わり方を変えることが、何の予防になるか
- ADHD(注意欠如・多動症)——ペアレント・トレーニングが最初に開発された領域