ASDと仕事
力を発揮できるかどうかは、指示の出され方と感覚環境でほぼ決まります。能力の問題ではなく、情報の渡され方の問題であることが多くあります。
かんたんにいうと
- あいまいな指示が、いちばん困ります。
- 音や光のつらさは、席を変えるだけで減ることがあります。
- 得意なことは、強い武器になります。
つまずきやすい5つの場面
1. 曖昧な指示
「適当にやっといて」「いい感じにまとめて」「なるべく早めに」。
これらは情報として不完全です。多くの人は経験から補完しますが、その補完が働きにくいと、動き出せないか、意図と違うものが出来上がります。
「察しが悪い」と評価されがちですが、実際には渡された情報が足りていないだけです。
2. 暗黙のルール
「この会議は形式だけ」「この人の意見は通しておく」「その言い方は角が立つ」。
明文化されていないルールは、職場のどこにも書かれていません。知らないまま踏むと、理由が分からないまま関係が悪くなります。
対策は、教えてくれる人を1人つくることです。上司でなくてもかまいません。「これって普通どうするんですか」と聞ける相手がいるかどうかで、職場の難易度が大きく変わります。
3. 予定の変更
急な差し込み、会議の前倒し、担当の入れ替わり。変更そのものより、変更を知らされるタイミングが問題になります。
- 「変更がありそうなときは、決まる前でもいいので一報ください」と伝えておく
- 予定表を1か所に集約する(複数のツールに散らばると追えない)
- 変更が多い部署は、それ自体が向き不向きの判断材料になります
4. 感覚環境
もっとも改善しやすく、もっとも軽視される領域です。
| つらさ | 調整の例 |
|---|---|
| 話し声・電話の音 | 席を壁際・端に移す、イヤーマフやノイズキャンセリングの使用を認めてもらう |
| 蛍光灯のちらつき・まぶしさ | 席の位置を変える、モニタの輝度と配色を変える、日よけを使う |
| におい(香水・食事・喫煙) | 席の配置、休憩場所の変更 |
| 人の動きが視界に入る | 席の向きを変える、パーティションを立てる |
| 気温 | 服装の自由度、卓上の扇風機やひざ掛け |
多くは費用がほとんどかかりません。 席の移動やイヤーマフの使用許可は、会社にとって負担の小さい調整です。合理的配慮として求められる範囲に入ります。
5. 雑談と付き合い
昼休みの雑談、飲み会、雑談から始まる打ち合わせ。業務そのものより疲れるという人は少なくありません。
- 昼休みは1人で過ごしてよい、という前例を早めに作っておく
- 飲み会は「毎回は出ない」を最初から通しておく(途中から断るほうが難しい)
- 疲れたときに戻れる場所(車、非常階段、近くの公園)を確保しておく
力を発揮しやすい条件
裏返すと、次の条件がそろう職場では強みが出ます。
- 仕様や手順が文書になっている
- 求められる成果がはっきりしている
- 深く掘る仕事に価値がある(分析、検証、品質管理、専門技術、資料作成)
- 一貫性・正確さが評価される
- 担当範囲が明確に分かれている
ASDの特性である「同じ状態を保ちたい」「細部が気になる」は、品質を守る仕事ではそのまま長所になります。曖昧さを許さない性質が要求される領域では、むしろ得がたい資質です。
気をつけたいこと
周りに合わせようとしすぎると、疲れが蓄積します。 特性を隠して振る舞い続けることを「カモフラージュ」と呼びますが、これは相当な負荷がかかります。
うまくやれているように見えて、家に帰ると動けない、休日が回復に消える、という状態が続いているなら、それは持続可能ではありません。
働き方そのものを見直す選択肢(障害者雇用、就労支援)も含めて、早めに相談してください。
出典
- DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版 テキスト改訂版(American Psychiatric Association, 2022)
- 発達障害ナビポータル↗
- 障害者差別解消法(内閣府)↗
- 障害者雇用(高齢・障害・求職者雇用支援機構)↗