合理的配慮の求め方
配慮を求めることは、特別扱いのお願いではありません。法律に位置づけられた手続きです。ただし「言わなければ始まらない」という点だけは、知っておく必要があります。
かんたんにいうと
- 配慮をおねがいするのは、わがままではありません。
- 法律で決まっている仕組みです。
- ただし、自分から言わないと始まりません。
合理的配慮とは
障害のある人が、他の人と同じように働いたり学んだりできるように、過重な負担にならない範囲で行われる調整のことです。
眼鏡をかけて黒板を見るのと同じ考え方です。能力を割り引いてもらうのではなく、能力が発揮できる形に環境を整えるものです。
法律ではどうなっているか
2つの法律が関わります。
| 法律 | 内容 |
|---|---|
| 障害者差別解消法 | 不当な差別的取扱いの禁止と、合理的配慮の提供。2024年4月1日から民間事業者も義務(それまでは努力義務) |
| 障害者雇用促進法 | 雇用の分野における差別の禁止と、合理的配慮の提供義務 |
雇用の場面では、以前から事業主に合理的配慮の提供義務があります。 障害者手帳の有無は要件ではありません。
まず知っておくこと:言わないと始まらない
制度上、配慮は本人からの意思の表明が起点になります。会社が察して先回りする仕組みではありません。
「察してほしい」「言わなくても分かるはず」は、残念ながら機能しません。言語化して伝えるところまでが、こちら側の仕事になります。
伝え方の型
うまくいきやすい伝え方には、共通の形があります。
1. 困っている「場面」を具体的に言う
| 伝わりにくい | 伝わりやすい |
|---|---|
| 集中できません | 電話の音が続くと、30分ほど作業が止まります |
| 指示が分かりにくいです | 口頭だけの指示だと、優先順位を取り違えることがあります |
| 疲れやすいです | 会議が3件続くと、午後の作業の精度が落ちます |
診断名を出す必要はありません。 「場面 → 起きること」の形で十分です。
2. 具体的な案を自分から出す
配慮を求めるときにいちばん効くのは、「こうしてもらえると解決します」を自分で用意していくことです。相手は「どうしたらいいか分からない」ことが多いためです。
- 「席を壁際に移してもらえませんか」
- 「指示をチャットで一言もらえませんか」
- 「会議は午前に寄せられませんか」
- 「イヤーマフの使用を認めてもらえませんか」
3. 会社側の利点も添える
「配慮してほしい」だけより、「これをすると成果が上がる」という形のほうが通りやすくなります。
口頭の指示だと確認のやりとりが増えてしまうので、要点だけチャットでいただけると、手戻りが減って早く出せます。
4. 記録に残す
口頭で決まったことは、自分から確認のメールを送っておくと後で揉めません。
本日ご相談した件、以下の認識で進めます。①席の移動 ②指示はチャット併用 ③次回の見直しは3か月後
求められる配慮の例(職場)
| 領域 | 例 |
|---|---|
| 情報の渡し方 | 指示を文書・チャットで併用、業務マニュアルの整備、手順の図示 |
| 環境 | 席の位置変更、パーティション、イヤーマフ・ノイズキャンセリングの使用許可、照明の調整 |
| 時間 | 業務量の調整、優先順位の明確化、通院のための時間確保、時差出勤 |
| 進め方 | 定期的な短い面談、中間確認の場、担当業務の明確化 |
| コミュニケーション | 相談先を1人決めておく、変更の事前連絡 |
断られたときは
まず、断られること自体は違法ではありません。 過重な負担にあたる場合があるためです。ただし、次のように進めることができます。
- 理由を聞く — 費用なのか、業務上の支障なのか、前例がないだけなのか
- 代替案を出す — 「では、まず1か月試させてもらえませんか」「費用がかからない方法ならどうですか」
- 社内の別窓口に相談する — 人事、産業医、健康管理室、社内相談窓口
- 社外に相談する
社外の相談先
- ハローワークの障害者専門窓口
- 地域障害者職業センター(各都道府県。高齢・障害・求職者雇用支援機構↗)
- 障害者就業・生活支援センター(通称「なかぽつ」)
- 都道府県労働局(障害者雇用に関する紛争解決の援助を行っています)
- 発達障害者支援センター
学校の場合
学校でも同じ仕組みが働きます。公立学校は以前から義務です。窓口は担任、特別支援教育コーディネーター、スクールカウンセラーです。詳しくは学びの場の選び方をご覧ください。